ノウハウ

工数管理ツールに「階層」が必要なのは、どんな人か

工数管理ツールを探していると、シンプルに時間を測るだけのものから、プロジェクト・カテゴリ・タグで何段にも区切れるものまで、幅があります。どれがいいかは、正直なところ人によります。そして「多機能なほうが良さそう」という基準で選ぶと、たいてい合いません。要らない階層は、便利機能ではなく、毎回の入力の手間として重くのしかかるからです。

この記事は、時間管理に「階層」――プロジェクトやフェーズで作業を区切る仕組み――が要る人と、要らない人の違いについてです。さらに、最初は要らなかった人が、どこで要るように変わるのか、という境目も書きます。ツールを比べる前に、まず自分がどちらなのかを見当つけておくと、選ぶのがずいぶん楽になります。

階層が要らない人は、ちゃんといる

先に、要らない側の話をします。測った合計時間さえ分かればいい、という使い方なら、階層はむしろ邪魔です。

たとえば、1日に何時間集中して作業できたかを知りたいだけの人。目的は自分のコンディション管理で、内訳はどうでもいい。この人にとって、プロジェクトを選んでフェーズを選んで…という操作は、得られるものに対して手間が重すぎます。ボタン一つで測り始められる、単純なタイマーのほうが確実に続く。

あるいは、単価も案件も一つで、月末に「今月の合計」が出れば請求が済む人。内訳を求められることもないなら、合計だけ正確に測れれば十分で、階層は一段も要りません。

私も、探索的に何かを試している時期は、階層を作らずにただ時間だけ流していることがあります。区切る対象がまだ決まっていないのに、器だけ先に作っても、埋まらない箱が増えるだけです。階層は、区切りたいものが自分の中にあるときに初めて効くもので、無いところに持ち込むと形だけになります。「立派な仕組みを入れたのに続かない」の半分くらいは、要らない段階で階層を入れてしまったことが原因だと思っています。

階層が効いてくる三つの合図

では、どういうときに階層が要るのか。私の感覚では、次のどれかに心当たりがあると、フラットな記録では物足りなくなってきます。

一つめは、複数の案件や領域を並行しているとき。案件Aと案件Bと社内作業が混ざっていると、合計時間だけでは「どれにどれだけ使ったか」が分からない。月末に「今月はAが多かった気がするけど、Bはどれくらいだっけ」と思い出しで按分するはめになり、たいていどちらかに寄って正確さを欠きます。プロジェクトで分けて記録していれば、この按分そのものが消える。ここは階層の恩恵がいちばん分かりやすいところです。

二つめは、同じ仕事の中で「工程」を見返したいとき。一つの案件でも、設計・実装・レビューと段階があって、「どの工程がいつも重いのか」を知りたい。合計時間ではこれは出ません。「今回は40時間かかった」までは分かっても、その40時間の内訳――設計に何時間、レビュー対応に何時間――は、フェーズで区切っていないと復元できない。フェーズで分けておくと、どの工程に時間がかかっているかが後から読めるようになり、次の案件の見立てが変わります。

三つめは、見積もりを立てて、実績と突き合わせたいとき。見積もりは「何かの単位」に対して置くものなので、その単位――成果物やタスク――が記録側にも無いと、見積もりと実績を並べられません。「プロジェクト全体で見積もり50時間、実績65時間」だけでは、どこで外したのか分からず、次に活かせない。成果物ごとに見積もりと実績が並んで初めて、「設計は毎回1.5倍かかる」といった校正ができる。見積もり精度を上げたい人には、階層はほぼ前提になります。

「要らない」から「要る」に変わる瞬間

面白いのは、この三つの合図が、たいてい時間とともにやってくることです。最初は要らなかった人が、途中から要るようになる。

副業で1件だけ受けていた人が、2件、3件と増える。趣味で作っていたものが、いつのまにか納期のある仕事になる。一人でやっていた作業に、手伝ってくれる人が加わる。こういう変化のたびに、「合計だけでよかった」が「内訳が要る」に静かに変わっていきます。階層が要るかどうかは、固定した性質ではなく、いまの仕事の混み具合の問題なのだと思います。

だから、今フラットなタイマーで足りているなら、無理に階層を使う必要はありません。ただ、上の三つの合図のどれかが顔を出し始めたら、それが移行のサインです。そのとき大事なのは、「移行できる余地があるツールを、最初から選んでおく」こと。合計しか測れないツールだと、案件が増えた瞬間に乗り換えが必要になります。浅くも深くも使えるツールなら、同じ道具のまま、必要になった分だけ階層を足していける。

深さは「要る分だけ」でいい

ややこしいのは、「階層が要る」と「深い階層をいつも全部使う」が別だということです。複数案件を分けたいだけならプロジェクトの一段で足りるし、工程を見たいならフェーズまで。成果物やタスクまで割るのは、そこまでの細かさが欲しいときだけでいい。

だから選ぶときの基準は、「階層が深いか」ではなく、**「自分が要る深さまで、無理なく割れるか。そして要らないときに浅いまま使えるか」**だと思います。浅くも深くも使える幅があって、普段は浅く回せるツールが、たぶんいちばん長く続きます。私自身の使い方も、いつも浅く始めて、粗さが気になったところだけ深く割る、というものです。LayerClock で階層を4段(プロジェクト・フェーズ・成果物・タスク)にしたのも、この“要る分だけ割れる余地”を用意したかったからで、いつも4段埋めてほしいわけではありません。

自分がどちらか、の見分け方

一つだけ簡単な問いを置くとすれば、これです。「先月、自分の時間がどこに消えたか」を、案件別・工程別に説明したいか。

説明したい、と思うなら、階層のあるツールが向いています。合計さえ分かればいい、案件も工程も一つだ、と思うなら、シンプルなタイマーで十分で、階層は手間にしかなりません。

もう一つ、補助的な問いを足すなら、「その説明を、誰かに求められる場面があるか」。クライアントに内訳を出す、チームで工数を共有する、自分の見積もりを直すために振り返る――誰か(自分を含む)に説明する相手がいるなら、階層はその説明の器になります。逆に、完全に自分の中で完結していて、合計で満足できるなら、器は要りません。

どちらが上ということはなくて、自分の仕事の混み具合の問題です。混んでいないうちは浅く、混んできたら深く――そのとき深くできる余地があるかだけ、選ぶ前に確かめておくといいと思います。

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