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工数を CSV で書き出す ― 記録をツールに閉じ込めないという考え方

タイマーで時間を測っていると、ツールの中にはデータが溜まっていきます。ただ、そのデータで実際に何かをする段になると――請求書に時間を書く、案件の採算を確かめる、見積もりを校正する――たいていツールの外に出す必要が出てきます。請求は会計ソフトで、採算は使い慣れた表計算で。

だから工数管理ツールにとって、CSV で外に出せることは地味に効きます。そして私は、この「出せる」を、単なる一機能ではなく設計の姿勢として捉えています。溜めた時間を素直な形で渡し、その先はユーザーが選ぶ――記録をツールの中に閉じ込めない、という考え方の話です。

まず正直な線引き

先に書いておくと、CSV エクスポートは LayerClock では有料の Business プラン(月 ¥980)の機能です。無料プランでも 4 階層 WBS もタイマーもレポートの基本も使えますが、書き出しはここで線を引いています。ここで大事なのは、有料であっても**「自分の記録を外に持ち出す」こと自体は塞いでいない**、という点です。データは利用者のものなので、出口は必ず用意しておく。どこを無料にしてどこから有料にしたかの全体像は無料プランの線引きの記事に書いたとおりです。

何が、どう書き出されるか

エクスポートすると、計測したログが1行1レコードの表になって出てきます。いつ・どのプロジェクトの・どのフェーズの・どの成果物の・どのタスクに・何時間、という粒度です。

ここで効くのが、4 階層で記録していることです。プロジェクト・フェーズ・成果物・タスクが、そのままとして並ぶ。つまり、1行を見れば「7月2日、Aプロジェクトの、実装フェーズの、決済機能という成果物の、Webhook 検証というタスクに、1.5時間」と、文脈がまるごと復元できる状態で出てきます。

この形だと、表計算に読み込んだあとの自由度がまるで違います。ピボットテーブルで行に「プロジェクト」を置けば案件別の合計が、「成果物」を置けば成果物別の合計が、一発で出る。月で絞りたければ日付列でフィルタする。集計の軸を、あとから好きに選び直せるわけです。もし平らな「作業ログ」だけ――日付と時間と一言メモだけ――を出していたら、あとから案件別に切り分けるのに、メモを目で追って手で分類することになります。最初から構造の列がついているかどうかで、書き出したあとの手間が桁違いに変わる。これは、階層で記録しておくことの、いちばん実利的な見返りかもしれません。

出したものを、また戻せる(往復できること)

エクスポートを設計として考えるとき、私が大事にしているのは「出せる」だけでなく「戻せる」ことです。LayerClock は、書き出した CSV と往復できるインポートを用意しています。エクスポートした構造を編集して読み込み直せば、WBS がその通りに再現される。往復に互換性がある、ということです。

これが効くのは、たとえば大きな WBS を一気に組み替えたいとき。画面でポチポチ直すより、一度 CSV に出して表計算で一括編集し、戻すほうが速いことがあります。でも、それ以上に大事なのは、**「出したデータが、ただの死んだコピーではない」**という安心感です。出しただけで二度と戻せない形式だと、エクスポートは記念写真のようなもので、実際の乗り換えや再構成には使えない。出して、直して、戻せる。この往復ができて初めて、「データは自分のもの」が実感として成り立つと思っています。

「閉じ込めない」ことを、設計として選んだ

工数管理ツールに、請求書作成や凝ったグラフをどんどん足していく方向もあります。全部ツールの中で完結させる、という思想です。私はあえてそこを深追いしていません。理由は二つあります。

一つは、単純に餅は餅屋だから。請求は請求のツールが、採算計算は表計算が、それぞれずっと長けている。中途半端に内蔵した請求機能は、たいてい本職の会計ソフトに負けるし、メンテナンスのコストだけ残る。きれいなデータを渡して任せたほうが、実務は速いし、こちらは記録を正確にすることに集中できます。

もう一つは、囲い込みたくないからです。個人開発のツールを使うとき、いちばん怖いのは「自分のデータが人質に取られる」ことだと思います。乗り換えたくなったとき、あるいはツールが終わってしまったときに、記録を持ち出せない――これが一番の不信の種になる。だから CSV の出口は、機能である以前に、「いつでも出ていける」という約束として置いています。実際、サービス終了時にもエクスポートの機会を用意する方針を明記しているのは、同じ考えの延長です。出せる状態を保証することは、囲い込まないことの、いちばん具体的な形だと思っています。

この姿勢は、機能を「足さない」判断にも効きます。何か新しい分析機能の要望が来たとき、まず考えるのは「これはツールの中に抱えるべきか、それともきれいに書き出せれば表計算で足りるか」です。後者なら、無理に内蔵しない。ツールを薄く保つことと、データを閉じ込めないことは、同じ方針の裏表です。

出したあとは、使い慣れた道具に渡す

書き出した先の使い道は、それぞれ専用の話になるので、ここでは入り口だけ示します。請求書の「作業時間」欄をどう埋めるかは請求の記事に、報酬を時間で割って実効単価を出す話は作業単価の記事に、見積もりと実績を並べて校正する話は月次振り返りの記事に、それぞれ書きました。

共通しているのは、どれも**「信用できる記録が、素直な形で手元にある」ことが出発点**だということです。逆に言えば、記録そのものが思い出しで埋めた曖昧なものだと、どれだけきれいに書き出しても、出てくるのは曖昧な数字のままです。CSV エクスポートは、その記録を実務に接続する最後の一歩を担うだけで、主役はあくまで、日々タイマーで積んだログのほうです。書き出しは出口であって、中身をつくるのは毎日の計測だ、というのは、最後まで変わりません。

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この記事で書いた CSV エクスポートは、LayerClock の Business プランで使えます。 4 階層 WBS(プロジェクト・フェーズ・成果物・タスク)で記録した時間を、プロジェクト・成果物の列つきで書き出し、編集して戻すこともできます。時間を測って溜めるところまでは無料で試せます

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